谷川なおさん・ご家族の物語
短腸症候群(SBS)と共に未来へ進む
[キーワード] 中腸軸捻転、壊死性腸炎、残存小腸16cm、学校生活、将来の夢
生後3日目に腸回転異常症による中腸軸捻転を発症して手術を受けた谷川なおさん(取材当時15歳)は、その後、壊死性腸炎となって再手術を受け、生後1カ月で残存小腸16cmの短腸症候群となりました。治療を継続しながらの小学校入学や中学受験に向けた主治医やご家族のサポート、ご自身の将来の夢などについて谷川さんご本人とお母様にお話しいただきました。
小学校入学を目標に、在宅治療に移行
ちとせさん(お母様):息子は小学校入学を目標に在宅へ移行する治療方針でした。院内学級の先生をはじめ、たくさんの方にご助言いただいて、小学校入学に向けて環境を整えていきました。
小学校入学、中学校受験の前には事前に学校の先生方と面談をし、息子の病気のことについて周知していただきました。
自分で決めた目標に向けて、中学受験に挑む
なおさん:中学受験は自分で決めた目標だったので、病気を理由に妥協したり、あきらめたりするのではなく、自分のできる範囲で納得いくまで精いっぱいやろうと思って取り組みました。
学校生活では、友人に自分の病気のことを知ってもらい、友人と一緒にいるときは無理することなく楽しみながら過ごせるように気をつけて生活しています。自分にできないことがあるときは、友人たちがすぐにサポートしてくれるので、心強いと感じています。
バスケットボールが大好きなので、自分の体力と相談しながら、休日は友人たちとよくプレーしています。
主治医に憧れ、将来は医師を目指す
なおさん:友人や人と話すことが好きなので、患者さんとのコミュニケーションを大切にする総合診療医が自分には向いていると思っています。
直接手術をし、命を助けるというわけではないですが、在宅訪問など患者さんの近くに寄り添い、手術をするプロフェッショナルの医師と患者さんをつなぐ懸け橋のような存在になれたらいいなと思っています。
食事管理を継続しながら、自立心を育てる
ちとせさん:主治医から食事制限について細かい指示が出ています。
小学校に通っているときは、給食室の方と相談し、除去食対応をしていただきました。中学校、高校ではお弁当を持たせて管理しています。
学食を利用したり、友人と出かける際には、外食を取り入れることもあります。そのため、息子本人から日々の様子を共有してもらうことを大切にしています。
その中で息子自身がおなかの調子を知り、自立心が芽生えているのではないかと日々感じています。
また、治療を続けていく中で、輸液減量と経腸栄養の増量ができ食事量も増えました。
体重増加のペースも上がり、体力がついたことで以前より元気に過ごせるようになったと思います。
今はCV(中心静脈カテーテル)を離脱して生活をしています。
友人や家族とのたくさんの思い出
なおさん:中学校の修学旅行で生まれて初めてCVも経腸栄養もつながずに、一晩クラスメイトと同じ部屋で宿泊できたことはとてもうれしかったです。
また休日に家族といろいろなところに行けるようになったこともうれしいです。
選びきれませんが、祖父のいる北海道、大きなプールがある遊園地、温泉旅行に行ったことはとても印象に残っている思い出です。
新しい治療薬に期待を寄せる
ちとせさん:息子が15年前に短腸症候群を患ってから日々、医療の進歩を身をもって実感しています。
患者さんは一日一日を懸命に過ごしていて、新しい治療薬への期待が大きいと思います。サポートする家族もきっと同じ思いを持っているのではないでしょうか。
なおさん:新しい治療薬は一つの希望だと思っています。
今、病気で苦しんでいる人たちの症状が改善される可能性が増え、より多くの人が幸せになる未来が訪れるのではないかと思っています。
SBS患者さんへのメッセージ
なおさん:自分が何をすることができて、何をしたらつらくなってしまうのかなど、自分自身を理解することが一番大切だと思っています。
短腸症候群は細かい食事制限で我慢することが多く、つらい場面もあると思いますが、食事制限の中でどうしたらより食事の時間を楽しむことができるのかなど、工夫のしかたによってはすごく楽しい生活が送れると思っています。