監修:大阪大学 名誉教授/滋慶医療科学大学大学院 教授
和佐勝史先生
消化器の構造
消化管とは
私たちは食物を消化し、栄養を吸収することで生きるために必要なエネルギーを得ています。食物を体内に取り込んだ後に、消化、吸収し、不要物を排泄するまでを行っている器官が消化器です。
消化管とは口腔から、咽頭、食道、胃、小腸(十二指腸、空腸、回腸)、大腸、肛門までを示します。食物はこの消化管を通り消化・吸収されます。消化吸収されなかった残りかす(不要物)は糞便となって排泄されます。
図1 消化器
各消化管の働き
口腔
口内で食物を咀嚼すると唾液と混ざり、唾液中のアミラーゼ(酵素)によってデンプンの消化が始まります。
食道、胃、十二指腸
食物は食道を通過し胃に入ります。胃では食物が貯留し撹拌され、胃液中の酵素や酸でタンパク質の消化が始まります。
大腸
大腸では水と電解質が吸収され、消化吸収されなかったものや老廃物を肛門まで運びます。
図2 小腸の拡大図
小腸
胃で撹拌された食物は十二指腸に移動し、膵臓から分泌される膵液や胆汁と混ざり、さらに各種酵素の消化作用を受けながら小腸の内部を移動していきます。小腸は約6mあり、ここでさまざまな栄養素が吸収されます。
小腸には、輪状のヒダが多数あります。ヒダの粘膜には絨毛(じゅうもう)と呼ばれる小さな突起があり、さらにその先端には微絨毛という突起が密生しており、これらによって粘膜の表面積が増え、栄養分の吸収を高めるのに役立っています。
短腸症候群(SBS)とはどんな病気?
短腸症候群(SBS)は腸管を大量に切除したため、消化吸収機能が極端に低下した状態を示します。
腸管を大量に切除した直後は、栄養状態を保つために中心静脈栄養法(TPN)が必要となります。
豆知識【症候群とは・・・】
はっきりした原因は不明ですが、いつも必ず幾つかの症状が伴って現れることです。シンドロームとも呼ばれます。
短腸症候群(SBS)はどのような症状があらわれるの?
短腸症候群(SBS)患者さんの主な症状
栄養欠乏、下痢、脱水、体重減少などが起こる傾向があります。そのため、多くの短腸症候群(SBS)患者さんで、水分および栄養を口から摂る以外にも補助していく必要があります。
また、栄養成分が足りなくなるとさまざまな欠乏症を起こすことが知られています。
切除した腸管の場所によって吸収できる栄養成分が違うので、さまざまな欠乏症があらわれることがあります。