久保市あんなさんの物語(記事)
短腸症候群(SBS)と向き合いながら、やりたいこと、興味のあることはなんでも挑戦したい
[キーワード] 壊死性腸炎、就学、修学旅行
久保市あんなさんは、生後5日目に壊死性腸炎が原因で短腸症候群となりました。小学校入学時はご家族や学校の先生のサポートを受けて中心静脈栄養をしながら学校生活を送り、現在は夜間のみ中心静脈栄養を行って高校生活を送っています。就学時にお母さまが学校の先生に病気のことをどう説明をされたのか、あんなさんがご自身の病気をどう受け止めながら学校生活を送られているかなど、お話をしていただきました。
生後5日目で壊死性腸炎が原因で短腸症候群に
あんなさん:私は、生まれて5日目に壊死性腸炎が原因で短腸症候群となりました。
主治医の先生からは、「あと数時間病院に来るのが遅れていたら、多分、今頃助かっていなかっただろう」というお話を伺っています。
3歳6ヵ月ぐらいまでは病院で過ごし、入院中は点滴をずっとしていたので、生活のほとんどを病院のベッドで過ごしていたということを覚えています。
中心静脈栄養の点滴をしながら通った小学校
あんなさん:小学校時代は、日中も点滴をしていたため、母が手作りで作ってくれたリュックのようなものに点滴を入れて、いつもランドセルのように背中に背負っていました。ランドセルを背中に背負っている時は、手提げバッグに点滴を入れて持ち歩いていたのを覚えています。
あんなさんのお母さま:支援学級の担任の先生が、生徒である娘のあんな1人にマンツーマンで付いてくれて授業を受けていました。娘が活動しやすいように、その先生が必要な時には点滴を持ってくださっていました。
入院したり、風邪をひいたりして長期で休んだ後には、授業を受けられずに遅れていた算数などを、交流学級ではなくて支援学級の教室で、先生がマンツーマンで教えてくれるというようなサポートもしていただき、大変助かりました。
就学時は担任の先生と事前に面談をして病気の説明を
あんなさんのお母さま:就学の際には入学式の前に学校に行って、担任の先生を事前に紹介していただきました。担任の先生や学年の先生などと一緒に、娘の点滴について「こういうふうな取り扱いをしてほしい」「こういうことができなくて、こういうことは今、練習中です」というのを細かくお伝えしました。また、「娘は学校に通う日中も点滴を行う必要があるけれども、先生方が心配するほどできないことがたくさんあるわけでもなく、本人もいろいろなことにチャレンジする気持ちを持っているので安心してほしい」ということをお伝えました。
点滴の操作などに関しては、娘自身でできることもあるので、どうしても先生が対応できない場合には本人に聞いてもらってかまわないこと、最初の半年は私も学校に付き添って登校し、教室の隣の部屋で待機しているので心配しないでほしい、ということも先生にお伝えました。
理科の授業をきっかけに自分の病気を自覚するように
あんなさん:小学5年生ぐらいの時に理科の授業で人体の構造というものを学習し、その時に学校の先生から、「人間の小腸というものは長くて、何十メートルとか、それぐらいの長さが体の中にあります」という話を聞いた時に、自分が何で点滴を付けて生活しているのだろうということに疑問を抱いた記憶があります。家で、そのことを母にたずねてみたところ、私が「短腸症候群である」っていうことを突然告げられて、衝撃を受けたことを覚えています。
あんなさんのお母さま:生まれた時から抱えている病気なので、娘には、「こういう病気だよ」とかしこまって伝えたわけではなく、毎日点滴をしている理由や病気について、普段の生活の中で娘が理解できる範囲で少しずつ伝えるようにしていました。
中学では日中の点滴を外して通えるように
あんなさん:中学校では、通常の授業は特別支援学級ではなく周りの人たちと同じ普通学級で3年間学習していました。プールの授業がある時は、小学校までは母がいろいろと介助をしてくれていましたが、中学校では自分でプールの用意と点滴の処置の道具を持って保健室へ行き、そこで着替えと処置をした後、友達と合流してプールの授業を受けていました。
修学旅行には母が付き添いとして同行してくれて、夜の点滴の介助だったり、何か緊急の場合に備えたりしてくれました。中学校に上がってからも、小学校での友達の交友関係はあまり変わらなかったので、自分のことをよく知っている人が周囲にいたこともあり、私の母が修学旅行に付き添いで来ていても、友達はそのことを気にせずに普通に接してくれて、私も修学旅行を楽しむことができました。
高校ではイベントに合わせて、主治医と相談しながら点滴内容を調整
あんなさん:現在通っている高校での大きなイベントは修学旅行でした。中学校の時よりも期間が長いということ、そして県外に出てしまうということもあり、旅行中に何か重大なことが起こらないように、主治医の先生とは半年ぐらい前から綿密に相談し、持っていく薬や注射に関して先生と確認をして準備しました。そのおかげで、無事に修学旅行に行くことができました。
病気を抱えながら生活していくなかで気づいたこと
あんなさん:自分の病気が、想像していたよりも珍しい病気だということを知り、興味が湧いて調べたことがあります。その時は、深く悩んでしまったことがありましたが、この病気と生涯一緒に付き合っていくという覚悟も生まれました。
この病気は珍しいものだけれど、周りの人はさほど気にしていないということも学校生活で気付かされました。私自身、「実は私、こんな病気持ってるんだよ」「でも、みんなと一緒に過ごせるんだよ」と胸を張って言えるので、この病気も一つの装備のようなもの、自分を表現するためにこの病気を活かしていこうと、今は捉えて生活しています。
SBS患者さんに向けてのメッセージ
あんなさんのお母さま:この病気は、すぐに良くなったり改善したりする病気ではないので、苦しい時もあるとは思います。毎日過ごしていると日常の一部になるので、一歩ずつゆっくり進む気持ちで過ごしていってほしいです。学校に通える日を増やしていったり、できることを増やしていったりしながら、少しずつ前に進んでいけると思うので、諦めないでほしいと思います。ものすごく頑張るとかではなく、少しずつ頑張る感じで過ごしてほしいと思います。
あんなさん:病気を持っているからといって思い詰めてしまう人がいると思いますが、「あまり思い詰めなくていいよ」ということは、まず一つ伝えたいです。自分が生活してて感じることですが、意外と自分が思っているよりも、周囲の人は病気のことを気にしていない場合が多いので、「気にしないで」ということを伝えたいです。
自分の気持ちに正直にならないといけないところもあると思うので、自分の体調と相談しながらですけど、やりたいことは我慢をしないでほしいです。「自分は病気を抱えているから、これができないんだ」と決め付けてしまうことは、自分を不幸にしてしまう大きな原因だと私は思っています。自分の努力次第で何とでもなる世界に、今なってきていると思うので、諦めないでほしいです。「治療がつらい時だったとしても、そこを乗り越えられるように頑張ってください」と、今は伝えたいですね。